主張・見解
改正刑法の正しい運用で実効性を
婦民新聞第1741号(2023年6月30日号)より
性犯罪規定を見直し、「不同意性交等罪」を創設する刑法改正案が、六月十七日、参院本会議で、全会一致で可決・成立しました。
刑法は一九〇七年に制定以来、性暴力の被害者の立場に立っていないことから、二〇一七年に一部改正されましたが、不十分としてこの間、検討会などで検討を重ねてきました。
改正法では、強制性交等罪と準強制性交等罪を統合して「不同意性交等罪」に改称し、罪の構成要件を同意の有無を中核とした要件に変更。暴行、脅迫、アルコール・薬物の摂取、地位の利用などにより、被害者の同意の意思表示を困難にさせて、性交をした場合処罰の対象とするものです。
公訴時効を現行よりそれぞれ五年延長し、被害時に未成年の場合は、十八歳から起算。性的同意年齢を十三歳から十六歳に引き上げ。わいせつ目的で子どもを懐柔する罪や盗撮行為の処罰も新設。付則には五年後の検討・見直し条項がはいりました。
今回の改正は、検討会に被害者が参加し、その声が反映されているので、識者・関係者から大きな前進と評価されています。しかし残された問題や五年後の見直しに向けた課題も指摘されています。
積極的な同意がなければ処罰する「イエス・ミーンズ・イエス」規定の創設や、公訴時効の撤廃・延長などが指摘されています。
また法律の正しい周知と共に、人権としての性教育を重視し、「性的同意」とはどういうことかの理解を社会で共有し、「加害者も被害者も傍観者もつくらない社会」の実現が求められます。